定点観測

 

 萩原朔美氏は「だいちの星座 ーたねがしま座・つくば座・もりや座ー」展会期中に実施されたシンポジウム(2015年8月/アート・スペース・キムラ ASK?)の中で、「だいちの星座」は定点観測によって浮かび上がる日常生活の中の特異性を見ようとする作品ではないかと指摘しています。私たちの活動は人工衛星によって定点観測の視点を得ており、作品中に「星」として描き出された無数の点は日常生活の中の変化そのものです。「だいちの星座」と定点観測の関係について触れたいと思います。

 地球観測衛星は(ほぼ)同じ高度と軌道から地球を観測し続け、定期的に同じエリアの画像を撮像し続けることで定点観測を行うはたらきがあります。研究者らはこれらのデータを利用して地球上の様々な変化を見つけます。高度な科学の集積と理論を具体化する工業技術によって常に正確な運用が行われる人工衛星を利用することで、現代に生きる私たちは宇宙から地球を見る定点観測の視点が得られるようになっています。日本の地球観測衛星の一つである「だいち2号」は、私たちに定点観測の視点を与えてくれます。「だいち2号」に搭載されているセンサは、自らが地上に向けて発信した電波を再び受信することで地球を観測します。その電波は雲を透過する性質を持つために、地上を観測出来る可能性が高まり定点観測を行うには好都合です。

 「だいちの星座」は人工衛星による定点観測から得られる衛星画像を芸術制作に利用します。私たちの活動は、人々の日常の中に起こる変化が実は繰り返すことのできない特異の連続であり稀な出来事であることを、宇宙からの定点観測によってヴィジュアル化し明らかにしようとする試みです。私たちは時期の異なる2つの衛星画像(撮像エリアは同一)を重ね、変化のあったところを抽出することで、新たな画像上に無数の点を描き出します。これらの点を「星」と見なすことで、同じ画像上により大きく明るく現れる電波反射器を配置した地点が「星座」を構成する1等星に位置付けられ「だいちの星座」が完成します。「だいちの星座」は、人工衛星が提供する定点観測の機能を利用して、その地域に住む人々の生活の痕跡を無数の星に見立てて可視化しています。大地に意図的に「星座」を描く活動と、その地域に住む人々がそれぞれの生活によって描き出す無数の「星」が重なることで「だいちの星座」がつくられています。

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同一エリアで撮像時期をずらした2枚の画像を重ね変化抽出を行った箇所(中央の黒色の部分)。