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通信衛星と芸術

芸術と科学

1967年6月25日、世界初の国際テレビ中継放送番組「われらの世界」(Our World)が24ヵ国で放送されました。この番組はイギリスBBCが中心となり、4つの通信衛星(Intelsat1,2-2,2-3, ATS-1)を利用し、5大陸14の放送局が協力(日本からはNHKが参加)して制作されています。注目すべきは、人工衛星を利用した国際的な放送の初の試みに、20世紀を代表する多くのアーティストが出演している点です。パブロ・ピカソマリア・カラスのほか、ビートルズがアルバム録音中のスタジオで当時未発表だった新曲「All You Need Is Love」を演奏しています。この番組の後、70年代の「カウンター カルチャー」の世界的な広がりもまた、60年代後半から70年代にかけて次々に実用化された人工衛星、とりわけ通信衛星に支えられてきました。

1984年1月1日にはナムジュン・パイクが2国間同時テレビ中継によってパリ、ニューヨークを結び、出演するアーティストらが映像を介してセッションするプログラム「Good Morning Mr.Orwell」が放送されました。歴史や地域性、人種や性別などを頼りに社会を構造化する動きに批判的なアーティストが出演しています(日本では同年年末に再編集されたものが放送されています)。

テレビ局が多国間で映像等の情報が送受信されはじめた1963年以降、通信衛星を利用したテレビ放送はビートルズらアーティストのグローバル化に一役買ったと言えるでしょう。一方で1984年には、かつてジョージ・オーウェルが書いた小説「1984」に注目していたナムジュンパイクは、2国間同時中継技術を利用し、視聴者にとって受動的で固定化されたコンテンツの配付に留まっていた当時のマスメディア的テレビ放送のあり方に一石を投じました。同作品は、相互通信機能を伴う現在の映像配信インフラの発展に影響を与えたと言われています。

60年代以降、芸術文化と通信衛星を利用した映像配信インフラの間には相互の密接な関係を見ることができます。直接放送衛星を含む通信衛星と映像芸術の関係は、科学が芸術・文化を後押ししつつ芸術も科学と共に歩むための提案を行う等、芸術と科学が同じフィールドで活動している様がその変遷に現れています。

 

参考:

NHK 映像の世紀プレミアム 第1集「世界を震わせた芸術家たち」(2016年5月放送)

http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/3681/2899040/

 

武蔵野美術大学美術館・図書館 イメージライブラリー所蔵 映像データベース

http://img-lib.musabi.ac.jp/search/index.php?app=sakuhin&mode=edit&data_id=5780